F1 2019R1 オーストラリアGP(1)
いよいよ開幕を迎えました2019年のF1。
シーズン前の状況
開幕前のテストでは「フェラーリが圧倒的優位!」などと言われ、その一方で、5年連続ドライバーズチャンピオン/コンストラクターズチャンピオンを獲得しているメルセデスは、昨年チャンピオンのハミルトン自ら「フェラーリより1周あたり0.5秒は遅い」とコメントするような状況でした。
そしてその2チームを追いかけるのがレッドブル・ホンダ。
レッドブルは昨年までルノーエンジンを使用していましたが、弟分チームであるトロロッソが昨年ホンダエンジンの供給を受け、様子を見た上で、今年からホンダエンジンに切り替えました。
ルノーは、レッドブル(とマクラーレン)にエンジンを供給しつつも、自らルノーチームを運営しているので、どうしてもレッドブルへのサポートが十分ではなく(フェラーリとメルセデスは自チームでエンジンも開発している)かなりご不満がたまっていた模様(というかその不満をメディアに向けてぶつけて若干揉め事になったり・・)
そんな状態でありながらも昨年は4勝を挙げ、ドライバーズラインキングはフェルスタッペンが4位、リカルドが6位という結果を出し、確実にメルセデス、フェラーリに次ぐポジションにあるチームです。
ホンダに切り替わったからと言って成績が下降するわけにはいきません。
ホンダには、メルセデス、フェラーリには勝つまでは行かないまでも、ルノー以上の性能、信頼性、デザイン面での要求に応えるなどの対応が求められます。
テストでは大きなトラブルもなく、ホンダの評価は上々でシーズンを迎えました。
決勝前の状況
前振りが長くなりましたが、開幕戦、蓋を開けてみると金曜日の練習走行(FP1)からメルセデス勢が速さを見せ、ハミルトンが3セッションともトップタイムをたたき出し、一方のフェラーリ勢はベッテルが2位、5位、2位という結果で予選を迎えます。
予選は、結果的にメルセデスの圧勝。
1位ハミルトン、2位ボッタス。そしてボッタスと3位ベッテルの差は0.592秒。
F1での1周0.5秒はかなり大きな差です。
テストでの「0.5秒遅い」と言っていたハミルトンのコメントはブラフだったのでしょうか。。。
ベッテルは呆然とするしかありません。
予選4位には、フェラーリ勢の間に、マックス・フェルスタッペンが割って入った。
エンジンパワーが要求されるストップ・アンド・ゴー型のオーストラリアGPにおいて、どうしてもホンダエンジンのパワー不足が顕われてしまう中、なかなかの好成績。
(とはいえ、5位に止まったフェラーリのルクレールはQ3の走行でミスがあったとコメントしており手放しでは喜べませんが)
決勝レース序盤
そして決勝レース。
スタートと共に飛び出したのは2位のボッタス。
ハミルトンも決して悪いスタートではなかったものの、ボッタスがそれを上回るスタートを見せ、1コーナーを1位で通過。
2位にハミルトン、以下、ベッテル、フェルスタッペン、ルクレールと予選通りの順。
しばらくこのままの隊列が続きますが、レースが大きく動いたのが15周目。
早くもベッテルがアンダーカット(先にピットに入って順位アップを狙う作戦)狙いのピットイン。
そしてそれをカバーするように、ハミルトンも翌周にピットイン。
しかし、ボッタスもフェルスタッペンも動かず。
このフェラーリの戦略の狙いはちょっと意味がわかりませんでした。
この早いタイミングでのタイヤ交換により、結局レース終盤に至る前には既にタイヤが厳しくなってきており、メルセデスを追うどころか、レッドブルに先行されてしまうことになってしまいます。
状況に応じて2ストップ狙いだったのかというと、結局上位では誰も2ストップはしておらず、そもそも元から2ストップの可能性はほとんど無かったことから、それも考えにくく・・・。
せめてハミルトンだけでもアンダーカットで抜くつもりだったのか?
いや、それには差が開きすぎていたし(3秒ほど開いていたはず)実際にハミルトンを抜くには至らなかった、、というか至りそうもない差がありました。
フェラーリは、昨年もこのような意味不明な戦略をとって順位を失ってきましたが、今年もその悪癖は治っていないようです(今回に関しては結果的に順位も失っていませんし、)。
一方のハミルトンもそれ以上はペースが上がらず、最終的にはボッタスにフリーストップ(ピットストップをしても順位が変わらない)が可能なほどの差を付けられてしまう。
フェルスタッペンの好走
そこから追い上げを始めるたのがフェルスタッペン。
1回目のピットストップを25周目まで引っ張り、ベッテル、ハミルトン同様、ミディアムタイヤに交換。
ベッテルよりも10周以上新しいタイヤで一気に差を詰め、31周目にはコース上でベッテルをオーバーテイク!
いくらタイヤに差があるとはいえ、
・抜きにくいと言われるメルボルンのアルバートパークサーキット
・予選でもフェラーリの方が速かった
・しかもエンジンパワーでは劣っていると言われているホンダエンジン
という3つのネガティブな要素が有りながらも、コース上でフェラーリを抜くというのは非常にインパクトのある事件。
その後も、2位のハミルトンを追い、1秒を切るところまで追いつきますが、ハミルトンもまだ余力があり、追い抜くまでは行かず。
ファステストラップを巡って
そしてレースが残り数周になり、今年からのレギュレーション変更の1つ、ファステストラップに1ポイントが追加されるというルールが注目を集めます。
この時点でのファステストはボッタス。
しかし54周目にフェルスタッペンがファステストを叩き出す。
実はこの時点でファステストを狙いやすいのはフェラーリの2台。その後ろにいるハースのマグヌッセンまでは約30秒のタイム差があるので、ここでピットインをしてソフトタイヤに履き替え、ファステストラップを狙う、という方法が残されている。
結果的にフェラーリはこの方法を取らなかった。ピット作業時にミスをする可能性もあれば、その後のアタックラップでミスをしてしまう可能性もある。
しかしここでボッタスがピットに無線を入れる。
「僕は26ポイントが欲しい。だから最後にタイムアタックをする」
そしてラスト2周となった57周目に宣言通りファステストラップを叩き出す。
ハミルトンとフェルスタッペンの差は約1秒となり、十分なアタックをすることはできなくなった。
ボッタス完勝、レッドブル・ホンダのフェルスタッペンが開幕戦で3位表彰台
結局、ボッタスがスタートで前に出たまま独走優勝。
昨年はハミルトンの陰で1勝もできなかったが、開幕から幸先の良いスタートを切った。これを機に覚醒できるか。
2位にはハミルトン。勝てないと思うときっちり確実にゴールにマシンを運ぶモードに切り替わり、2位を確保。
そして3位には前述のフェルスタッペン。
これで昨年の17戦日本GP以降6戦連続表彰台。
今や表彰台の常連。やはり表彰台に乗るのは必須条件として求められるものであり、ホンダはここで喜んではいられない。
4位と5位はフェラーリのベッテルとルクレール。
テストの好調さはなんだったのでしょうか。
特に、ドライバー二人ともマシンに対する不満が無いと言うところがまた気がかり。
マシンとしてはまとまっており、バランスも良いのでしょう。
そうだとすると、マシン全体としてのレベルを1段階上げなければならない、ということになります。
クルマというモノは、バランスが大事で、大きくエンジンパワー、車体の安定性、タイヤのグリップ力。そしてF1では空力性能が大きく影響します。
エンジンパワーだけを上げても、それを支える車体が安定しなくなったり、タイヤのグリップ力が不足しては、せっかく上げたエンジンパワーは活きません。
逆に今回のレースのメルセデスは、マシン速いものの、TV画面からも不安定な感じが伝わってきており、解説陣からも「大丈夫なのか」という不安の声が上がっていました。
問題点が一箇所明らかになっていれば、力を注ぎ込むポイントが明確になるので、対応はやりやすいことが多いです。
しかし「バランスは良いのに遅い」というのでは、次に打つべき手段に迷いが生じます。
うかつに手を出すと、これまでのメリットを潰してしまいかねません。
フェラーリの抱えている問題は意外と根の深いものになるのかもしれません。
その一方で、今回のオーストラリア、メルボルン・アルバートパークサーキットは、路面も荒く、ストップ・アンド・ゴータイプの今となっては古いタイプのサーキットです。
次のバーレーン、中国、そしてアゼルバイジャン(ここは公道レース)を挟んでのスペインは、また今回とは違った新しいタイプのサーキットになりますので、そちらに行けばフェラーリは復調するのかもしれません。
しかし、今回のメルセデスの速さがサーキットの特性によるものではなく、最後のテストから開幕までの間のメルセデスチームの修正力によってもたらせられたものであれば、今シーズンもこのままメルセデスが突っ走ってしまうのかもしれません。