TF-NETWORK

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2020年F1 フェラーリ パワーユニット技術指令書問題

昨年一悶着有り、今年に入ってからもまだまだ収まらないフェラーリパワーユニット(以下、PU)問題。
ざっとおさらいしていましょう。

www.as-web.jp

フェラーリF1代表、FIAの技術指令書がパワーユニットのパフォーマンスに影響していると明かす | F1 | autosport web

https://news.yahoo.co.jp/articles/7d24f420ecad2830de6af3b02c1cd982fd045e10

 

レギュレーションの確認

現在のF1では、PUに送り込むことのできるガソリンの量が決まっています。
2020年のレギュレーションは概ね下記の通りです。

  1. レースで使用可能な燃料の量は110kg以下。
  2. 量は1時間あたり100kgまで。
  3. レース終了時に1リットル以上残っていること
  4. 燃料タンク外の場所には0.25リットルまで搭載可(2019年は2リットル)

まず1,2が基本的な内容です。
110kgのガソリンを1時間あたり100kgのペースで消費できます。
レースはたいてい1時間半前後、最大でも2時間ですから、ギリギリの1時間100kgのペースで消費してしまうと、ほぼ全てのレースで燃料切れになってしまいます。

これを1時間で100kg減ったかどうか、、、ではなく、ガソリンタンクからエンジンの間にセンサーを設け、一定間隔の流量をチェックし、そこから1時間の使用量を算出している、という仕組みのようです。
つまりは、「1時間あたり100kg」といっても、最初の50分は50kg、残り10分を超強力パワーで50kg使い切る、というようなことは不可のようで、「1時間あたり100kg」=「1分あたり約1.66kg」=「1秒あたり約27g」というのが最大消費量ということになるようです。

もう一つは4.の内容です。
この文章は本来、燃料タンクとエンジンの間のパイプの中に一時的に燃料が存在することを許容するための文言と思われますが、これを逆手に取るならば、燃料タンクからエンジンに向かって流れた燃料は、2019年であれば2リットルまでなら他の場所に一時的に溜めておける、というようにも読み取れます。

つまり燃料噴射装置の手前に溜めておき、パワーが必要なときに多く燃料を噴射する、ということが可能になると思われます(本当にフェラーリがこのような手段を使っているのかは不明)。

ちなみに話はそれますが、潤滑用のオイルを燃焼させていたのはメルセデスが始め、2017年まで行われていました。この時点では明確にレギュレーション違反ではありませんでした。
2018年からは明確に禁止になり、オイルの搭載量も決められましたので、事実上オイルの燃焼は不可能となりました。
本件はこのオイル燃焼の件とは別件です。

 

何故発覚したのか

2019年、夏休み明けのベルギーGP以降、フェラーリが急速にストレートスピードを増し、強さを取り戻しました。

ここからルクレールが4戦連続ポールポジション、2連勝。
フェラーリとしても6連続ポール、3連勝を遂げます。

これでフェラーリがPUに何か”細工”をしたのではないかと疑われることになります。
そして11月3日、アメリカGPの予選日にFIAから「技術指令書」が出されます。

www.as-web.jp

F1 Topic:技術指令書がフェラーリ失速の原因とするのはまだ早計。トップ3チームの各セクター最高速を比較 | F1 | autosport web


このレースでフェラーリの連続ポールポジションはストップ。
レースでもチームとしての連続表彰台が6で止まります。
これで更に疑惑が深まったわけです。

 

レッドブルからの質問状

この仕様はオープンにされていなかったのですが、レッドブルからFIAに質問状が出されます。

jp.motorsport.com

レッドブルF1、FIAに燃料流量計の使用明確化を要求。フェラーリ”攻撃への布石?

 

これに伴い、FIAから改めて燃料のレギュレーションについて「指示書」という形で通達が出ます。
どうやら2200hz(1秒間に2200回)の間隔で燃料の流れている量をチェックしているそうです。

f1-motorsports-gp.com

フェラーリパワーユニット:謎のジェットモードに迫る!燃料・流量・オイルのグレーゾーン? | F1モタスポGP.com


つまりは、1/2200秒(0.00045秒)の間隔で、規定された量より多くの燃料の送り込むことができれば、エンジン(ICE)でより多くの燃料を燃焼させ、パワーを上げることができるのではないか、ということですが。。。ホントにそんな細かい制御が可能なのかどうかは謎です。


そして開幕前の2020年2月に謎の「和解」

2020年シーズンのオフシーズンテスト前に、次のニュースが報じられます。

jp.motorsport.com

FIA、パワーユニット不正疑惑問題でフェラーリと“和解”。今後はPU監視で協力体制へ

 

とても雑に大まかに言ってしまえば、
「去年のフェラーリのPUは恐らく違反だったんだけど、FIAとしては証拠を突きつけられなかったので、見逃してあげることにしました。でも今後はやりませんので許してね」
・・・ということかと。

ホントにこのまま言ってしまうと、メルセデスレッドブルあたりはぶち切れまくり、温厚なホンダさんでさえ黙っていないであろう、大事件になってしまうので、オブラートでぐるぐる巻きに包みまくったのが上記のニュースの内容になるのかと思われます。

 

この件についてはこれ以上進展することはないでしょう。
というのも、

jp.motorsport.com

メルセデス、方針転換? フェラーリPUの合法性をめぐる”反和解同盟”から離脱か

 

これ以上フェラーリを追求して「ゴタゴタが続くF1」がニュースになるのは、メルセデスとしてもイメージ戦略上、望む展開ではないということのようです。

仮にフェラーリにペナルティが科されて、例えば2019年全レース失格、賞金没収などというペナルティが下された場合に、今後の活動に支障が出て競争力は失われてしまっては、メルセデスにとってもデメリットなのです。

今、メルセデスが最も恐れているのは「自分達が強くなりすぎたが故にF1人気が下がってしまうこと」でしょう。

そのためにも、フェラーリには”強きライバル”で居続けてもらわなくてはならないのです。