TF-NETWORK

日々思うことをつらつらと書き綴る場所です。

もうスパコン1位を喜ぶのはやめないか。

神戸のスパコン「富岳」世界一 計算性能で史上初の4冠
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202006/0013446909.shtml

スパコンがニュースになる度に話題になるのが、2009年11月13日当時、与党であった民主党(当時)蓮舫の「2位じゃダメなんですか」発言。

もう、当時のニュース記事はあまり残って居いないようでリンクはありませんが。
未だにスパコンが話題になる度に、この人の発言がセットで登場し、毎度のようにこの人のコメントもニュースになります。
同時にTwitterやニュースのコメント欄は、蓮舫氏を揶揄するコメントが多数投稿されます。
正直、うんざりしています。

そもそもスーパーコンピュータとは何なのか。

スーパーコンピュータ(以下「スパコン」)は科学技術発展のためのツールであり、スパコンを利用して何かを産み出すことが目的のはずです。
高性能なスパコンを作り出すことが目的ではないはずです。
Top500と呼ばれるベンチマークで1位を獲ることは、名誉ではあるかもしれませんが、それはスパコン開発の本来の目的ではないはずです。
ましてや、自民党旧民主党の政争の道具でも無いはずです。

ベンチマークで1位を獲ることの意義

2002年の地球シミュレータくらいまではスパコンベンチマークで1位になることに素直に喜べていましたが、京が稼働した2010年頃には、ベンチマークの実用性との乖離や膨大な消費電力が問題視されるようになったりと、Top500のベンチマークで1位を獲得することの意義が変わり始めた時期でもありました。
当初はベンチマークというとHPLでしたが、その後、Graph500やGreen500といった新たな指標のベンチマークが登場しました。
スパコンの性能指標が単純では無くなってきたのです。
(ちなみに、今回稼働した富岳はHPL、HPCG、Graph500、そして今回から評価対象となったHPL-AIの4冠とのこと)

2位で良いのか

 前述の通り、1位か2位かは問題ではありません。
 今でのコンピュータの進歩は日進月歩なので、後に開発した方が性能が高くなります。
 そもそも、「2位じゃダメなんですか」発言も、当時同時期に開発中であったアメリカのスパコン(セコイヤ)が予定通りに完成するとそちらが1位になる可能性が高く、それで2位になったらどうするんですか?との話の流れから出たもの。

「京の事業仕分けの議事録を改めて読み直したが、やはりこの件に関しては蓮舫氏が正しい。」(https://twitter.com/ohnuki_tsuyoshi/status/1275517605915189248
事業仕分け議事録:https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9283589/www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/nov13.html

 1位か2位かは他国の開発状況次第な面もあるのです。

 たまたま、他国のスパコンと完成時期がバッティングし僅差で2位になったとしてもそれほど大した問題では無いと思いますし、一方、最新機種が他国の3年前のスパコンと僅差で勝って1位になっても喜べないでしょう。
 スパコンのランキングで1位になるということは、そういった様々な要因の中での結果に過ぎないのです。

大事なのは何なのか

そもそもスパコンはその計算能力を活かして、様々な研究・開発を行い、製品を産み出すために使用されるモノです。
日本には様々なメーカーや研究機関があります。
彼らの研究開発を支えるのがスパコンであり、それにどれだけ貢献できるのかが本来あるべきスパコンの評価指標ではないでしょうか。
そしてそれを量として表す最もわかりやすい数字は、コンピュータ1台の計算能力では無く、国全体の計算能力ではないでしょうか。

昨今のスパコンの傾向

そのためには、最上位機種にリソースをつぎ込むばかりでは無く、台数や平均的なスペックの向上(Top500に何台送り込めるか)といったことも重要になってきます。
Top500の台数と実効演算能力を2020年と2011年で比較してみました(出典:https://www.top500.org/statistics/list/)。
■2020年
米国 114台 638PFlops
中国 226台 565PFlops
日本  29台 527PFlops
■2011年
米国 255台 25.3PFlops
日本  26台 11.2PFlops
中国  61台  7.1PFlops

日本は台数・実効演算能力共に3位です。
9年前は実効演算能力では2位でしたが、中国に逆転されています。

この10年間で中国が台数を増やしている一方、アメリカは大幅に台数を減らしています。
同時に、計算力の差はだいぶ均衡してきている感があります。

これからのスパコン

では、日米中の国家としての計算力が近づいてるのかというと、そう単純な話では無いと思われます。
日本も含めスパコンをバンバン開発して計算力を上げるという傾向は既に終わりに近づいており、スパコンの用途は限られていくのではないかと思われます。

その理由は言うまでもありません。クラウドサービスの隆盛です。
最近のAWSでは、2011年頃であればTop500に入るくらいのスペックのサーバをすぐに用意することができます。
わざわざ自前でサーバを購入したり、特殊な電源を用意する必要は無く、オンラインの手続きだけでサーバを準備できてしまうのです。

そして今、圧倒的なクラウドのリソースを保持しているのはアメリカです。
アマゾンのAWS、グーグルのGCPマイクロソフトのAzure、IBMやオラクルもクラウドサービスを展開しています。
中国はアリババ。
日本は・・・残念ながらそのような大規模クラウドサービスはありません。

いずれにしても、徐々にクラウドサービスに移っていく傾向は、しばらく変わることはないでしょう。
もちろん急にスパコンが無くなったりはせず、単体で膨大な計算力を求められる研究開発は、これからもスパコンを使い続けることになるでしょうが、スパコン1位の重みは、またこれまでとは違ってくるでしょう。

コロナについて、一システム屋が思うこと


コロナウィルスとフェイルセーフの考え方

 2020年1月。中国で新型コロナウィルス感染のニュースが徐々に広まっていました。
 職場に中国人がいたこともあり、コロナウィルスについて度々話題になりました。
 意見は大きく二つに分かれました。

  • 中国国内で流行ってるだけで日本には関係ない。死に至るのは高齢者だけで40代以下の死者は出てないらしいし、すぐに収束するので関係ない。
  • 今のところはそうだが、未知のウィルスだし、この先どのように広まっていくかわからない。気をつけなければ。

 一般の方々がどう思うかは私ごときがとやかく言う筋合いはないのですが、システムに関わる者として、前者の意見は理解し難いものです。

 1月時点では武漢を中心に感染者が増加を続ける最中。
 そんな状況下で根拠もなく「すぐに収束する」などと何故断定できるのでしょうか。
 そして、何故重篤に陥るのが高齢者だけだから関係ないと言えるのでしょうか。

 感染者数の推移が、10人、15人、20人、25人と続いたら、次は30人。2人、4人、8人、16人と続いたら32人と予測するのが至って普通の発想でしょう。 次の日は0になるかもしれないなどと自信満々に言える話ではありません。
 システムテストで日々バグが10件、15件、20件と増える状況下で、何の対策も打っていないのに「明日は0になるから大丈夫です。対策は不要です。」などとは真っ当なシステム屋としての思考ではありません。

 また、重篤な患者が高齢者だけだから感染しても大丈夫というのも、システム屋としての思考に疑問を感じます。
 当時詳細な感染経路はハッキリしていませんでしたが、潜伏期間が長く無症状のまま感染させてしまう可能性については語られていました。
 当人すらも気付かぬうちに第三者に感染させて、場合によっては親や祖父母、全く赤の他人の老人を死に至らしめる可能性もあったわけです。
 これも、ある不具合が発生した場合に、類似のケースが他にも潜在していないか見直すという見地が欠如しています。

中国からの入国を何故即時禁止しなかったのか

 改めて言うまでも無いでしょう。この時点で経済を優先したから、ということでしょう。
 もちろん2020年はオリンピックの開催を控えていたというのも大きな理由でしょうけど、純粋に今や日本経済は中国無しには成り立たないため、止められなかったという実情を認めざるを得ません。

 ここ10年ほど、中国との貿易総額は30兆円を超えています。
 30兆円というと年間国家予算の約30%、1年間の消費税総額に相当する金額です。
 また、この金額は日本の貿易相手として最大の金額で、2位のアメリカは約25兆円です。

 これまで経済政策・好況をアピールしてきた安倍政権にとって、中国との入出国を停止し、この流通金額が大幅に減少させるということは、とてつもない経済的なダメージを与えることになるのです。

 2002年~03年、同じように中国から発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)では日本での感染は広がらず、入出国を停止することなく感染は治まりました。
 今回の新型コロナウィルスは結果的に日本国内にも感染が広がり、様々な経済活動を停止することになってしまいましたが、仮にSARS同様日本での感染が広まらなければ、中国との入出国停止は拙速で経済的なダメージを大きくした誤った判断として安倍政権を揺るがしたことになったでしょう。

 どちらかが絶対的に正しいということはあり得ません。
 基本的に疫病の感染拡大は全員に対して不利益が襲いかかるものです。
 今(5月5日)改めて考えても、2月時点で中国からの入出国を止めるのが正しかったのかどうか、正確に判断するのは難しいでしょう。
 結果的には、中国との入出国を止めようが止めなかろうが、政権は誰かからか厳しい世論を突きつけられることになっていたのです。

欧米が正しいという勘違い

コロナの感染に伴い、各国のリーダーの支持率が軒並み上昇しているそうです。

新型コロナ対策で各国リーダーの支持率が軒並み急上昇、一部の例外も(2020/04/23)  
https://forbesjapan.com/articles/detail/34031  

そんな中、一部の例外として支持率を下げているのが日本の安倍首相。

日本の安倍政権だけが「コロナ危機で支持率低下」という残念さ(2020/04/17)  
https://president.jp/articles/-/34684  

 何故支持されていないのかは上記記事の本文に譲るとして、ここで疑問に思うのは、結果として感染者数・死者数は欧米に比べれば日本は大幅に少ない被害で済んでいるということです。

 上記報道のタイミングに合わせた、4月20日現在の国別感染者・死者数です。

新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年4月20日版)  
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10936.html  

主要国を死亡者順に並べてみました。
多くの先進国を含むこれらの国々の中で、日本は死者数を下から2番目に抑えています。

国・地域 感染者 死亡者
米国 759,118 40,665
イタリア 178,972 23,660
スペイン 195,944 20,453
フランス 112,606 19,718
英国 120,067 16,060
ベルギー 38,496 5,683
イラン 80,868 5,031
ドイツ 145,742 4,642
中国 82,747 4,632
ブラジル 38,654 2,462
スウェーデン 14,385 1,540
カナダ 33,922 1,506
スイス 27,661 1,134
インド 16,116 519
ロシア 42,795 361
韓国 10,674 236
日本 10,751 171
台湾 420 6

にも関わらず、欧米の各国首脳は支持率を上げ、日本でも欧米の対応を褒め称える意見も相次いでいます。
特にドイツのメルケル首相の対応は高評価のようです。

「さすがメルケル首相」新型コロナ対応で人気復活 世論調査満足度も64%(毎日新聞2020/4/8)  
https://mainichi.jp/articles/20200408/k00/00m/030/322000c  
新型コロナ対策、際立つ女性リーダーの手腕 スピードと実行力で拡大阻止(2020/04/17)  
https://www.cnn.co.jp/world/35152496.html  

しかしそのドイツも死者数は4000人を超えています。ドイツの人口は8000万人ですから国民全体の死亡率は0.005%。
一方の日本は人口13000万人に対して約170人で、国民全体に対する死亡率は0.00013%とドイツの1/30以下です。
日本の検査件数が少ないことや、PCR検査を受けられずに死亡後にコロナ感染が発覚することもあり、日本の数値に対する信頼性を疑う声もありますが、さすがに30倍もの差異を見落としているという事は無いでしょう。
日本の新型コロナウィルスによる被害は、至って低く抑えられていると言えると思います。

そもそも欧米の対策はそれほど正しかったのでしょうか。
これまでのニュースを時系列で追ってみましょう。

まず、2月上旬にはアジアでのコロナウィルスの拡大が大きなニュースになり、欧米では日本人や中国人を含む、アジア人への差別が始まります。
欧米人にとっては、まだ新型コロナは他人事の時代です。

アジア人差別も始まった新型肺炎の大パニック(2020/02/03)  
https://toyokeizai.net/articles/-/328180  

2月中旬、ヨーロッパで初めての死者が出ます。フランスでした。

フランスで新型コロナウイルス死者 アジア以外では初(2020/02/15)  
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/02/post-92409.php  

ちなみに日本で初めてのコロナウィルスによる死者が出たのは2/13です。2日しか違いません。
この時点では、まだヨーロッパにも余裕があり、こんなニュースもありました。

今夏の五輪「ロンドン開催を」 新型肺炎で市長選候補名乗り(2020/02/20)  
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020022000249&g=int  

2月22日、アメリカCDC(疾病対策センター)が、日本への渡航に関する注意レベルを「レベル2」に引き上げます。
欧米諸国も、新型コロナウィルスの流入に気をつけ始めます。

新型コロナウイルス:【まとめ】各国の日本への渡航に関する動き—感染広がる日本へ強まる警戒(2020/02/25)  
https://www.yamatogokoro.jp/37184.html  

そして2/27にはアメリカのサンフランシスコで非常事態宣言が出されます。

サンフランシスコ市が非常事態宣言…テック企業やチャイナタウンの商店では、すでにコロナウイルスの影響が(2020/02/27)  
https://www.businessinsider.jp/post-208392  

2月下旬、イタリアでの感染者急増が目立ち始めます。
2/27には1日で80人患者数が増加します。

新型ウイルス、イタリアで感染急増 24時間で80人増  
https://www.bbc.com/japanese/51654314  

このあたりから、欧米での感染が急増します。一方、日本の感染者数はそれほど変化はありません。
欧米の感染急増は止まることなく、3/11、ついにWHOはコロナウィルスがパンデミック(世界的大流行)であると認めます。

前後して、欧米各国で緊急事態宣言(表現は国毎に異なるが)が出されます。
3/17には、EU各国で入域制限が始まります。
ドイツは日本に近く、第2次世界大戦の教訓から政府が強権的に国民の行動を制約する命令を出すことを認めていないようです。
メルケル首相が一躍名を上げた演説は3/18でした。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に関するメルケル首相のスピーチ  
https://japan.diplo.de/ja-ja/themen/politik/-/2331254  

この時点でのドイツの感染者は7000人超、死者は13人です。
しかし、国境での検問を行う以外に特別な施策が打ち出された訳ではありません。

そこから約1ヶ月後の4/20には、ドイツは14万人を超える患者と4600人を超える死者が出ています(日本は171人)。
それでも尚、ドイツの対策が素晴しいと称える声が大きいのは何故なのでしょう。私には理解できません。

3月26日にはオリンピックの延期が決定されます。

新型コロナウイルスで東京五輪延期(2020/03/26)  
https://www.bbc.com/japanese/52045029  

それまで「オリンピックがあるから日本は感染者数を少なめに見積もっている」と揶揄されており、それがホントかどうかはわかりませんが、その後感染者数、死者数とも急増しました。
しかし、それでも尚、欧米に比べればはるかに少ない死者数です。

「今の東京、2~3週前のNY」 現地の日本人医師が警告―新型コロナ  
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020040500150  

こんな事を言われたりもしましたが、結局日本の感染者数が欧米のように急増することはありませんでした。
これまでの結果から見るに、日本の”疫病としての”コロナ対策は上々の結果を示しているかと思います。

結局のところ「金」の問題なのか?

それでは日本と欧米で何が違ったのかというと、「休業補償」です。
4月上旬に次のようなニュースが報じられました。

新型コロナ給付金の支給時期、「ドイツはオンラインで最短2日、日本は早くて1か月」という差にガッカリ  
https://this.kiji.is/620541433300517985?c=44341039600582657  

ドイツ在住の日本人がドイツの保証制度に申し込んだところ2日後には60万円が振り込まれたとのこと。
日本ではその後、国民へ一律10万円の支給を決めましたが、支給には1ヶ月ほどかかるということです。
金額、対応のスピード感の違いが話題になったようです。

しかし、この記事もミスリードがあります。
まず60万という金額は誰にでも支給される金額ではなく、これまでの収入から算出される金額です。この記事からだけでは高いか安いのかは判断できません。
また、記事中にもあるように金額の多寡であれば、日本でも中小企業・フリーランスに対しては200万・100万の補助金が出ることが発表されています。

やはり問題はスピード感ということになるのでしょうが、これを実現するためには予め必要な制度があります。
それが日本でいうところの「マイナンバーカード」です。
そしてこのマイナンバーと納税履歴、銀行口座が紐付いてこそ、ドイツのような対応が可能となります。

ところが、日本ではマイナンバーカードを発行している人は国民の約10%と言われています。
もちろん、元は”国が確実に税を徴収するため”の制度であって、国からお金をもらうことは考えられていなかったとは思われますが、いずれにしても、この普及率ではマイナンバーカードありきの制度設計はできません。
そしてこのマイナンバーカードの普及に反対したのは国民であり、このマイナンバー制の原型は1968年の佐藤栄作首相時代まで遡ります。
長い反対運動を経て、2013年に自民党が政権を取り戻した第2次安倍政権でようやくマイナンバー制が施行されることになったのです。

個人番号  
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%80%8B%E4%BA%BA%E7%95%AA%E5%8F%B7  
マイナンバー制度導入までの歴史と今後の問題点をおさらい  
https://setsuyaku.ceo/post/414/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%BC%E5%88%B6%E5%BA%A6%E5%B0%8E%E5%85%A5%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%81%A8%E4%BB%8A%E5%BE%8C%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C%E7%82%B9  

個々人が当時どのような判断を下したかはともかく、この経緯を知っていれば給付の遅さが現政権だけの要因ではないことはわかるはずです。

また、様々なサイトやSNSを見ていると欧米では数十万単位の補助金が出ているのに、日本は「アベノマスク」が2枚支給されただけではないかとの意見が散見されますが、全国民への10万円一律支給もありますし、下記のように様々な補助金・給付金制度が提供されています。

経済産業省新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf

むしろ責められるべきは補助金や給付制度が無いことではなく、種類が多すぎかつ支給条件が複雑すぎることで、これでは支給条件に該当しているのか判断するだけでも一苦労、更にはこれを役所に問い合わせ、実際の支給に至るまでの労力を思うと、気が遠くなってしまいます・・・。
恐らく、これらの支援金の全てが、必要としている人の手元に届くことはないでしょう。
運用負荷が高すぎて使われなくなるシステムが生まれる課程を目の当たりにしているようです。

ホンダと日産の合併・・意外とあり得るかも。

日産に走る激震

昨年から混乱続きの日産に更なる激震が走りました。

日産、ナンバー3関・副COOの退社発表
www.jiji.com

日産ナンバー3の関氏、辞任発表 社長含みで日本電産
www.asahi.com

カルロス・ゴーンが逮捕され、その後任となった西川社長も辞任。
その後継には53歳の内田誠氏が就任しますが、COOに三菱自動車COOだったアシュワニ・グプタ氏(49)、副COO(最高執行責任者)に関潤氏(58)と、3人がトロイカ体制でそれぞれの強みを活かし役割分担していくと言われていました。
そのうちの一人が就任1ヶ月も経たないうちに辞任ということです。

もはや、先行き全く不透明の日産。
このままでは、最悪ルノー傘下に入らざるを得ない展開も起こりえます。
日産という企業を維持する上では、そういう選択もあり得るのかもしれませんが、国内No2をホンダと競う日産をみすみす外資の手に下してしまうのは国家的損失になりかねません。

そこで、こんな話も上がってきているようです。

自動車業界で大型合併も 日産とホンダ統合に経産省が動く
www.nikkan-gendai.com

この話、先日のホンダ系部品会社三社が日立オートモティブシステムズに買収されることになった時も一部で話題になっていました。

日立・ホンダ、傘下の車部品4社合併へ-生き残りへ系列見直し
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-29/Q05S81DWLU6P01

もしホンダと日産が統合したら?
diamond.jp

ホンダと日産。
両社の成り立ちや、これまでの日本国内自動車メーカー2位の座を争う姿からは、この2社が合併するなどとはなかなか想像できません。
まさかそんなわけが、、、と一瞬思ったのですが、考えてみると意外と上手く噛み合ってしまうかもしれません。

意外と棲み分けできているラインナップ

両社の主要販売車種を見てみましょう。

クラス ホンダ 日産 評価
軽自動車 N-BOX DAYS ホンダの勝ち
コンパクト フィット ノート ★ホンダの勝ちだが日産も好調!
小型SUV ヴェゼル ジューク ジュークは日本販売中止予定
小型ミニバン フリード ホンダ不戦勝
小型セダン グレイス シルフィ 両方とも微妙・・・
ミニバン ステップワゴン セレナ ★両社好調!
セダン アコード ティアナ 両方とも微妙・・・
SUV CR-V エクストレイル 日産の勝ち
大型バン オデッセイ エルグランド/NV350 タイプ異なる
高級セダン レジェンド フーガ/スカイライン 日産の勝ち
高級スポーツ NSX GT-R/フェアレディZ クラスが異なる
EV クラリティ リーフ タイプ異なる

こう比べてみると、ホンダと日産で真っ向から戦っている車種は、★の付いている、マーケットの大きいフィットvsノートの小型車と、ミニバンのステップワゴンとセレナくらいではないでしょうか。
それ以外は主に小型車はホンダ、大型車は日産が強い傾向が見て取れます。

こう見ると、両社が合併しても販売戦略上、激しくバッティングすることはあまりないと思われます。
小型車がホンダ主体、大型車は日産主体。
大型でもホンダ車で実績のあるオデッセイは微妙かもしれませんが、フラッグシップカーであるNSXは継続開発していくことも可能ではないでしょうか。

「人」の気持ち・・・

そうなった時に気になるのは、人間の心理状態、特に社員の方々の心理です。
これまで長年に渡って販売台数2位の座を競ってきた両社。
開発や販売は前述のように、両社の強みを活かして棲み分けがある程度できたとしても、必ず重なり合う部分は出てきます。
その時に、ホンダが主導権を握れるのか。日産はそれに従えるのか。
そうなった時に、前向きに協力して成果を出すことが出来るのでしょうか。

一つだけ確実に言えるのは、どちらかが主導権を握らなければいけない、ということです。
某大手銀行のように、交替で社長を出すとか、出身会社毎に役員の数を揃えるなどということはしてはいけません。
その一方で、完全に自由な状態では、内部でも権力争いが発生しかねません。

このまま日産の混乱が続けば、ホンダが主、日産が従という形にならざるを得ないとは思いますが、ホンダも決して業績好調とは言えないところが難しいところです。

そして何よりも両社の社風の違い。
本田宗一郎というカリスマの元で成長してきたホンダ。
戦前の財閥を母体とし、様々な会社を吸収合併して大きくなってきた日産。
この二社がどういう形で融合するのか、そのイメージを持つのはなかなか難しいと思います。

日立製作所の役割

そこで登場するのが日立製作所
10月末、日立オートモティブシステムズがホンダ系の部品メーカ3社(ケーヒン、ショーワ、日信工業)を統合することとなりました。

「CASE」というキーワードの元、大きく変貌を遂げている自動車業界。
これまで「機械」が主体であった自動車業界に、電機とソフトウェアが関わってくることは間違いなく、トヨタはかなり以前からパナソニックとの関係を強めています。

元々日立製作所日産自動車の関係は近いところにあり、共に戦前に鮎川財閥と呼ばれた企業グループの一つで、同グループには日本石油(現:JXTGホールディングス)も含まれていました。
戦後は、日立、日産とも、旧安田財閥が主体となった芙蓉グループに含まれ、継続して近い関係にあったのです。

日産とそういう関係にあった日立がホンダとの関係を強化したというのは、これからの自動車業界の行方を想像した時に何らかの方向性を指し示していると思わずには居られません。
GoogleAmazonも自動車業界に関わり始めるこの時代に、日立グループの1企業がホンダという自動車メーカとの関わりを持って、1サプライヤーとして製品を供給する。それで話が終わるということがあり得るでしょうか。

日立グループにはネットワーク機器の製造や自動運転に関わるソフトウェアの開発を行う企業もありますし、小型発電機から発電所まで作る企業があります。
それらの企業が、何らかの関わりを持ってくるというのは自然のなりゆきではないでしょうか。
ホンダと日産の間に日立という企業が深く関わり合うことで、また新たなホンダと日産(+日立)の関係が出来上がりそうな気がします。