F1 2019R1 オーストラリアGP(2)~中堅チームの争い~
前回は上位陣に触れましたが、今回はTop3(メルセデス、フェラーリ、レッドブル)の後方を争う中堅チームについてです。
2月のテストでは全くの混戦模様で、テストのタイムシートを見てもその強弱はわかりませんでしたが、この開幕戦でその力関係は少しずつ見えてきました。
ハース
まず中堅グループトップに立つのはハース。
現在参戦する10チームの中では最も新参ですが、外注によるコスト削減とフェラーリとの協力関係を活かし、このポジションを確実なものにしつつあります。
惜しむらくはピットワークをはじめとしたチームのオペレーションにやはり経験の少なさが出てしまっています。
そして二人のドライバー。グロージャンとマグヌッセン。
決して遅くはないのですが、何かと問題の多い二人です。
もっと確実なドライバー、勝利を狙えるドライバー、このオフであればライコネンやリカルドを獲るチャンスはあったわけですが、望まなかったのは望まれなかったのかはわかりませんが(恐らくチームが望まなかったのでしょう)、ドライバーラインナップは昨年と同じとなりました。
開幕戦では、案の定、グロージャンのピットストップに問題があり、タイヤが外れかけてリタイアという結果になってしまいました。
昨年はもっとヒドく、2台ともタイヤの交換ミスでリタイアという結果だったので、それに比べれば、、、という話もありますが、そもそも同一チーム2台ともタイヤが外れてリタイアということ自体がF1の歴史に残りかねない珍事件であり、慰めにもなりません。
しかし一方で、その速さに間違いはありません。
テストでも、日本のメディアからのニュースではホンダの陰に隠れてしまっていましたが、トップ3に続くチームは?という問いにはトロロッソよりもハースを上げる声が多かったように思います。
ちなみに開幕前テストの序列、私の印象では、
アルファロメオ>ハース>ルノー>トロロッソ>マクラーレン>レーシングポイント>ウィリアムズ
と思っていました(あくまでも報道からの印象です)。
ルノー
この次は僅差ですがルノーで良いでしょう。
ただこれはクルマそのものの性能というよりは、二人のドライバーによる部分が大きいのかもしれません。
マシンにはこれといって大きな特徴は無く、開幕前のテストでは4日目にヒュルケンベルグが最速を出していますが、これもまだメルセデスやフェラーリがタイムを狙っていなかったためでもあります。
その一方で、自社でエンジンを製造するワークスチームとしてのメリットもありますし、開発資金も他の中堅チームの中では多く(むしろ、ワークスなのですから、フェラーリやメルセデスと争えるはずなのですが)、まだまだ開発の余地はあるはずですし、開発競争にもついて行けるはずです。
アルファロメオ
その次も僅差ですが、アルファロメオ(旧:ザウバー)でしょう。
こちらもライコネンというチャンピオン経験のあるベテランドライバーの存在が大きいです。
そして、このチームはなんと言っても大胆なフロントウィングのデザインが注目です。
今年からのレギュレーション変更で、フロントウィングは幅を広くする代わりに、エレメント(板)の枚数に制限が入り、複雑な形状をしたウィングが禁止となりました。
この変更により、複雑な形状でフロントウィングを通過した後の乱れた空気の流れをできるだけタイヤの外側に流す(アウトウォッシュ)ことができなくなりました。
しかしアルファロメオでは、フロントウィングの両端を大胆に削ることで、昨年と同じようなアウトウォッシュ効果を発生させようとしたのです。フェラーリのマシンでも同様の効果を狙った形状が見受けられますが、アルファロメオほど大胆ではありません。
開幕前のテストの結果も上々で、トップ3の次に続くのではと期待されたのですが、開幕戦ではライコネンが予選9位、決勝8位に入りましたが、ジョビナッツィが予選14位、決勝15位と下位に沈みました。
レーシングポイント
次はレーシングポイント(旧フォースインディア)です。
昨年、旧名フォースインディアが破産し、ランス・ストロールの父であるローレンス・ストロールと、チームのドライバーでもあるセルジオ・ペレスと繋がるメキシコマネーの力で、新たに「レーシング●」(←この●が「ポイント」らしいですが、わかりづらいので今後もカタカナで記述します)として復活しました。
しかし、そのゴタゴタのためか、マシンの開発が遅れ、何とか開幕前のテストには間に合ったものの、周回数は丸2日間参加できなかったウィリアムズ以外では最下位でした。
マシンの素性、開発能力には定評のあるチームですので、そのうち伸びてくるとは思っていましたが、開幕戦からペレスがQ3に進出する予選10位。決勝レースでもストロールが9位入賞と結果を出してきました。
この先も開幕前のテストに間に合わなかった新パーツが続々投入される予定で、今後の進化が楽しみなチームです。
何せ、資金面では中堅チーム随一でしょうから。
トロロッソ・ホンダ
そして次に来るのがトロロッソ・ホンダでしょう。
日本人としてはホンダに期待する面も有り、もっと上に居て欲しいですが、昨年も結果的にはランキング8位のチームですし、しかもシーズン中にテクニカルディレクターのジェームス・キーの離脱もありましたので、このポジションは致し方の無い部分もあるでしょう。
ドライバーも出戻りのクビアトに新人のアルボン。
これまでのテストや開幕戦の走りを見ていると決して悪くはありませんが、さすがにルノーの二人やライコネンと比べてしまうと格下であることは否めないですし、ペレスも実績のあるドライバーです。ドライバーの力だけではこの中段の厳しい争いをくぐり抜けることは難しく、チーム力、技術力、そしてホンダエンジン、それらの力が上手く絡み合って全体的に底上げをしなければNo4チームへの道は厳しいでしょう。
マクラーレン・ルノー
次にマクラーレン・ルノー。
アロンソが離脱して、技術陣もジェームス・キーの加入にともない、技術陣が入れかわり落ち着かない状況で開発されたマシンで、その出来具合が不安視されましたが、開幕前のテストでは(恐らく燃料が少なかったためとは思われますが)5日目、6日目とトップタイムを連発。
そして開幕戦では新人のランド・ノリスがQ3に進出し、なんと予選8位。決勝ではスタートで出遅れ12位に終わりましたが、昨年のF2ラインキング2位の才能の片鱗を感じさせました。
サインツは予選でトラフィックにハマってしまいQ1で脱落してしまい、決勝レースではまさかのエンジン炎上でリタイア第一号と散々な開幕戦になってしまいました。
今回はサインツが不運に見舞われたためマクラーレンMCL34の能力を測りきれませんでしたが、ノリスの走りがドライバーだけではなく、マシンなりのタイムなのでしたらこの先もまだ期待できそうです。
ウィリアムズ・メルセデス
そして最後はウィリアムズ・メルセデス。
開幕前テストには初日までにマシンを準備することができないという状況。
資金面でもストロール家が離脱してしまい不安が残る、、、と言いますか不安しかありません。
メルセデスが大した文句も言わずエンジンを供給してくれているのが唯一の救いです。
いずれにしても大きな結果は期待できないでしょう。もはやどこかの大きな資金、もしくはメーカーが手を差し伸べてくれることを待つしかない気がしています。
参考:F1-2019 プレシーズンテスト総まとめ!ベストラップ&周回数など | F1モタスポGP.com
参考:F1 Topic:規則の盲点を突き、新たな『アウトウォッシュ』を生み出すF1エンジニアたち